







2DKであった住戸を、施主が慣れ親しんだ「和」を基調とする一室空間へ再構築した。水廻りを玄関付近に集約して住戸全体を回遊できる動線を確保し、洗面の開口を通して玄関からの風を住戸内へ取り入れながら、生活の出来事が水平方向に連続する自由度の高い空間とした。
床座を基本とする暮らしに対して既存の天井高をそのまま踏襲せず、姿勢によって変化する身体と天井との距離を捉え直した。立位・椅子座・床座それぞれの身体感覚を手がかりに、天井高を1,780〜2,350mmの間で変化させ、あえて平均2,100mmに設定した。柔らかな曲線を描く天井の高低差が場の境界を緩やかに示し、一室空間のなかに生活場面の自然な切り替えを生み出している。曲面天井は、塗装によって光沢を与えたシナ合板で仕上げ、間接照明や障子越しの外光を受け止める反射面とした。正面に病院が建つ環境に対しては、障子によって視線を抑えながら光を内部へ取り込み、その反射光を住戸の奥まで導いている。
大楠の住居では、「和」を単なる意匠ではなく、用途を固定せず、身体と空間、内外の境界を緩やかに調整する空間原理として捉え直した。住戸の履歴を受け継ぎながら、一人で過ごす時間と人が集う時間という異なる性質を受け止める一室空間を目指した。
BEFORE
築52年を迎えるこのマンションは、大きな吹抜けを囲むようにコの字型の共用廊下がまわり、玄関扉を開ければ心地よい風が住戸を抜け、隣接する小学校から子どもたちの声が聞こえる環境にある。一方で、建物正面には病院が位置し、病室開口部が並ぶため、採光と同時に外部からの視線への配慮も求められた。
竣工当時の住戸は2つの和室からなる2DKであり、同マンションでも生活様式の変化とともに和室を洋室へ置き換える改修が重ねられてきた。本住戸においても、その流れのなかで一部が洋室化され、水廻りを含めて部分的な更新が行われていた。計画当初の現地調査では、光沢のある新建材のフローリングに光が反射し、奥行きのある住戸でも明るい印象を受けた。
本計画では、光の反射を既存の質として引き継ぎながら外部環境との関係を捉え直し、施主の暮らしを重ねることで、住戸に蓄積された履歴を新たな住空間へ再構築することを方針とした。

