







かつて個人のための別荘だった建物を、多くの人が館山の自然と時間を体験できるリトリートにリノベーションした。
既存建物の構成と庭との関係を読み解き、それぞれの場所に新たな役割を与えることで、建物と庭を一体の滞在空間として再編した。
絵画を印象的に配置した「調和の間」、人々が集い食卓を囲む「居と食の間」。屋外には、テラスやBBQスペース、サウナなど活動的な「動の前庭」と、坪庭や芝生の中で穏やかに過ごす「静の後庭」を設けた。そして、それぞれの場をつなぐように、回遊性のある「円廊」を挿入した。
円廊によって室内と庭の境界を緩やかにつなぎ、滞在者がその時々の気分に応じて居場所を選びながら、食べる、語らう、庭を眺める、サウナに入る、休むといった行為が屋内外を巡りながら展開する滞在のあり方を生み出した。
こうした既存空間の再編集と並行して、新たに加えるものには現代のものづくりを取り入れた。サウナにはShopBotによるデジタルファブリケーションを導入し、デジタル技術によって加工した部材と職人の手仕事を組み合わせることで、新旧の技術がひとつの建築の中で共存するものづくりを試みた。
館山が育んできた別荘文化を継承しながら、既存の建築・素材・記憶に新たな技術と滞在のあり方を重ね、「館山で過ごす」という文化を次の時代へつないでいく。
BEFORE
別荘地として親しまれた千葉県館山市。しかし、ライフスタイルの変化や人口減少に伴い、利用されなくなった別荘や空き家は年々増加している。
その変化によって失われつつあるのは建物だけではない。そこで過ごした時間や風景、人々の記憶、そして自然とともに過ごす館山らしい別荘文化そのものが、少しずつ地域から姿を消しつつある。
本計画の建物もまた、かつて大学教授の別荘として使われ、良質な木材や丁寧な仕事が残されていながら、長年使われることなく静かに佇んでいた。
私たちは建物を新築するのではなく、この土地で過ごす時間そのものを再編集することから計画を始めた。解体を単に壊す作業ではなく、「残すもの」「転用するもの」「新たに加えるもの」を見極める設計行為と捉え、既存材にも新たな役割を与えながら、館山が育んできた別荘文化を現代のリトリートとして未来へつなぐことを目指した。

