透明な希望 移住者夫婦と挑んだ、地方有休不動産の再生モデル

その他  /   エリア:宮崎県  /   掲載日:2025-09-17

その他  /   エリア:宮崎県

掲載日:2025-09-17

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私たちの挑戦は、一つの問いから始まった。トップライトや中庭といった大掛かりな手法に頼らず、この暗く細長い空間を奥まで光で満たすことはできないか、と。私たちの答えは、どこにでもある安価な工業製品「ポリカーボネイト波板」の「見立て」を変えることであった。
閉鎖的なファサードを透明の光の壁へと変え、その光を内部の間仕切りへと連続させる。積層されたフィルターは、まるで導光板のように自然光を建物の最奥部まで届けた。このローコストな建築的手法は、単なる空間の活用以上の意味を持つ。それは、潤沢な予算を持たない移住者や若き挑戦者が、各地に眠る遊休不動産を再生するための、再現性の高い「処方箋」となるからだ。大資本による開発ではなく、個人の情熱とアイデアが、地域を内側から変えていく可能性の証明である。
「つなぐDesign-Café」と名付けられたこの場所が、その全てを物語っている。この小さな光が、衰退する地方の商店街の次なる扉を開ける。建築にできるのは、そのための最もパワフルな後押しなのだ。
私たちが本当にリノベーションしたのは、建物ではない。この土地に深く根付いていた、「うなぎの寝床=負の資産」という固定観念そのものなのだ。

BEFORE


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この場所は、日本中の地方都市が抱える課題の縮図だった。超人口減少を背景に、城下町の歴史的景観の裏で昭和の商店街は遊休化し、年々シャッターを下ろす店が増える中、本作の舞台である築45年の元ラーメン店もまた、時代の流れに取り残されていた。
課題は明確だった。奥へ進むほど光を失う「うなぎの寝床」という構造的欠陥。この事業性を著しく毀損する「建築的負債」は、借り手を遠ざけ、建物の価値を負の領域へと沈めていた。
しかし、移住者の若夫婦だけは、この場所に可能性を見た。彼らの「この場所で、人と地域を繋ぎたい」という強い想いが、我々に問いかけたのだ。建築は、この普遍的な課題に、希望を提示できるのか、と。

Before

After

    • 部門
    • 無差別級
    • 間取り
    • 店舗
    • 費用
    • 900万円(税込)
    • 形態
    • 自由設計リノベ
  • 費用に含まれるもの
  • その他
  • 施主支給設備(費用に含まれないもの)

物件情報


    • 築年月
    • 1980年1月
    • 構造
    • 鉄骨造
    • リノベーション面積
    • 74.54
    • 施工期間
    • 3ヶ月
    • 備考

CREDIT


  • 設計:パークデザイン株式会社
  • 施工:岩下建設有限会社
  • 家具・備品:パークストック
  • 写真:酒生哲雄写真事務所