月見台住宅*は、横須賀市と連携し2023年に始動した「なりわい居住のまち」プロジェクトです。最寄駅から徒歩約10分、三浦半島独自の「谷戸」の丘の上に佇む「山の上の孤島」と呼ばれた立地が、今や人々を惹きつける秘境感あふれる舞台へと変貌しています。築65年以上の平屋公営住宅群は、単体の家ではなく58戸を集合体として計画し、団地全体を一つの「デザインされた集落」として創生しています。
このプロジェクトを支えるのは不動産投資型クラウドファンディング。株式会社エンジョイワークスが運営する地域活性化の共感ファンドを通じ、367組の投資家が参加しました。単なる投資ではなく、まちづくりにコミットする新しい仕組みです。さらに、投資家自身がDIYイベントに参加し、利回りだけでなく「面白い!自分も参加したい」と関わる現象は、従来のまちづくりには見られない象徴的な出来事でした。
DIYも誰もが参加できるカルチャーとして広がり、入居者だけでなく投資家も共につくる体験が積み重ねられています。集合体だからこそ「一人ではできないけれど皆でならできる」という勇気が生まれ、連帯意識が育まれています。かつて不便さが強調されていた場所は、今やファンタジーのような世界観をまとい、自治体・事業者・投資家・入居者が一体となりながら育てる新しいコミューンとして広がっています。
BEFORE
戦後の住宅難を背景に整備された市営住宅。旧市営田浦月見台住宅は、労働者とその家族の暮らしを支えるセーフティネットとして機能し、多くの営みを受け止めてきました。この特徴的な「平屋住宅群」は長く労働者のための住宅として地域の基盤となる役割を担ってきました。しかし時代の変化とともに入居者は減少し、その機能を終えて2020年に廃止。全戸空き家となり、荒廃が進んだ「月見台」は人口減や高齢化、公営施設の維持管理など地域課題の象徴となっていました。