「人が集まりたくなる職場に変えよう」――。
若者の製造業離れや人材不足という大きな課題解決のために選んだのは、オフィスの全面リノベーション。
「遊び心」と「かっこよさ」を軸に、社員アンケートを踏まえた空間を計画した。
・木質感を基調にリラックスして仕事が出来るワークスペース
・大型キッチンカウンターを要するラウンジスペース
・筋トレマシン、ビリヤード台やソファを備えたアクティブエリア
・射的スペースやゲームでバトルできる遊びエリア
・集中して打合せができるミーティングルーム
工場的だった昭和の事務所が「創造性と交流を育むフィールド」へとみるみる転換した。
「リノベーション後、社員みんなの声は大きく変わった」と藤本社長。若手社員は「ここに来ると気分が変わる。先輩に声をかけやすい」と語り、ベテラン社員も「若手とゲームで盛り上がれるのは予想外だった」と笑う。数字だけでなく、日常の風景そのものが変わった。
さらに、採用活動にも効果が表れた。会社見学に訪れた学生が「製造業にこんなオシャレな空間があるなんて」と目を輝かせ、志望動機につながる事例が増えている。単なる仕事場ではなく「この会社で働きたい」と思える空間が実現したのだ。
BEFORE
昭和45年創業の富士元工業は、切削工具「ナイスカット」で知られる精密加工の老舗メーカーである。
長年、モノづくりの現場を支えてきたが、近年は若者の製造業離れや人材不足という大きな課題に直面していた。
採用面接や会社見学で学生から「職場が少し硬い印象」「工場っぽさが強い」と言われることもあり、技術力の高さが伝わりきらないもどかしさを抱えていた。
長年使ってきたオフィスは、決して悪くはないが、どこか昔ながらの工場然とした雰囲気をまとっていた。効率を重んじる空間はあっても、社員同士が自然に交流し、創造的な発想が生まれるような場所は少なかった。社内アンケートやヒアリングを通じて出てきた声は、「もっとリラックスできる場所が欲しい」「新しい仲間に魅力を伝えられる空間があれば」というもの。