30年前、余裕も選択肢もなかった頃に手に入れた我が家。たくさんの思い出が詰まった大切な家ながら、施主夫妻は購入直後からいつか自分たちらしい空間にしたいと願い続けてきた。効率や流行に流されることなく、自分たちが心から心地よいと感じる暮らしを求めて建築誌を読みあさり、DIYで少しずつ手を加えながら30年かけて理想に近づけてきた。
今回のリノベーションはその積み重ねの延長線上にあるもの。床や壁には無垢材やタイルなど質感豊かな素材を選び、空間の表情を丁寧に整えた。キッチンの高さや浴室の寒さなど、日々の暮らしの中で感じていた小さな不便も一つひとつ見直した。収納棚は下地のみ施工し、仕上げはご主人の手で。家具はすべて長く共にしてきたものを使い続けている。
リノベ後、リビングに取り込んだ元和室部分には大きなテーブルを置いて、DIYを得意とするご主人の作業スペースに。
ソファでは奥さんが趣味のパッチワークを作成し、心地よい音楽と共にあたたかい時間が流れている。
変わったようで変わらない。変わらないようでたしかに変わった。そうして残ったものこそ、施主夫婦にとっての「たしかなこと」だった。
BEFORE
扉を開ければもともとリビングとつながったていた和室。
リビングの一部として使用しながらも、「あともう少し、こうだったらな、、」という箇所が点在していた。