みなとまちとして古くより栄えてきた塩竈市だが、JR塩釜駅周辺はいまひとつ盛り上がりに欠けていた。まちに溢れるタネを生かし、地域の人をもワクワクさせる仕掛けづくりができないかという課題から生まれたコンセプトが「職住一体の小商いアパート」である。アパートに入居した人が1階フロアをお店(=マーケット)として使う仕組みだ。入居者同士がマーケットを通してつながり、時には地域住民も巻き込んでマルシェやイベントを開催していく。施工中には小商いマルシェを行い、店舗のニーズを探った。このプロジェクトで塩竈市へ移住し、定食屋を始めた<ごはん屋はれ>は、まちの食堂として親しまれる場所になっている。ほかにも塩竈出身・在住の2組がフォトスタジオと美容院をオープンさせる。また、半分以上が空室だったアパートは募集開始から1ヶ月ほどで満室に。地域外の人が多く、コンセプトやライフスタイルに合った住空間がマッチし、ここを選んだようだ。プロジェクトは他のエリアでも展開予定である。
BEFORE
「思い出のある建物でもあり、本当は壊してほしくない、できれば残したい。」前所有者の強い意思が受け継がれたこの建物。JR塩釜駅から徒歩3分、隣には市の複合施設・ふれあいエスプ塩竃があり、さまざまな年代の人たちが行き交うエリアである。その一方で、駅周辺にコンビニはあるものの、飲食店などの店舗が少ないことが課題に感じられた。