クライアントはIT企業に勤める女性で日本のみならず世界中を見てきた敏腕ディレクターだ。移動が多く賃貸暮らしも悪くなかったが、故郷の北九州、小倉城のお膝元で既存住宅を購入し、ライフスタイルに合ったリノベーションを希望した。ポイントはプライベートとシェアスペースとその間の空間。そして将来的には母親と同居することも視野に入れたプランだった。時には知人たちを招き、もしくは自らが不在でも機能する”サロン”がシェアスペース機能となる。今やnLDKに変わる表記方法が必要となる昨今において、今回のプロジェクトはまさにそれを具現化するにふさわしいデザインを目指した。玄関ドアを開けるとそこはサロン、その奥にある大きなアーチは引き戸でもあり区切ることでプライベート空間を確立できる。玄関や廊下は存在しない。トイレの前室はギャラリーとなり各所のアーチ型建具は次の空間を飾る額縁の役割をもつ。小倉城もアーチの額縁で切り取られる。手触り感のあるオーダーキッチンや洗面などの水回りは世界中を見てきたクライアントにピッタリの上質なホテルライクな空間に仕上げた。将来的な母親との同居にも対応するサロンならではのバリアフリーなエントランスにはワインを飲んだり読書をしたり仕事をしたりという様々なシーンを受け入れる。1bed 1bath 1salon。”サロンに棲む”というライフスタイルは今を生きる彼女に最適な空間となった。
BEFORE
2005年に竣工したタワーマンションの1戸。間取りは当時のままで汎用的な内装仕様の3LDKだった。