札幌市南区真駒内に広がる「五輪団地群」。1972年の札幌冬季オリンピックの本部跡地に建てられた築47年のマンション群です。老朽化が進むこのエリアは、建て替えの噂も聞かれるようになりました。
オーナー様は学生時代にこの団地に住み、その後、社会人となり仕事でイギリス、ドイツ、フランスに赴任。62歳で定年を迎え、奥様と共に終の棲家として札幌の実家に戻ることを選択。元々は戻るつもりがなかったものの、お母様が大切に住んだこの家を手放すことができないという思いが、決断の決め手となりました。
ただ今までの暮らしからは手狭で、一度もリフォームされず古びた状態。しかし、ヨーロッパで経験した「古さを受け入れつつ住み続ける」文化に触れてきたご主人は、この家の魅力を引き出せると確信していました。古いままの集中暖房や見えている配管すらも、工夫次第でデザインの一部に変えることができると感じたのです。
ご主人の趣味である切手集めがきっかけで、海外から輸入した「うなぎ」や「カニ」をモチーフにした独特の壁紙を採用。さらに、イギリスのヴィンテージタイルやフランスのアンティーク家具を巧みに取り入れ、古さと新しさを融合させた住空間を作り上げました。
外観は歴史を感じさせながらも、室内はまるでヨーロッパの街角にいるような佇まい。オーナーご夫妻のこだわりが詰まった自分らしい住まいが完成しました。
BEFORE
本プロジェクトは、築47年のマンションのリノベーションです。当時、物件は64㎡の3LDKという部屋構成でした。
47年間丁寧に使われてきた設備機器や仕上げ材は、その役目を終え、取り替える必要がありました。
部屋は角部屋で、札幌の美しい山々が見渡せる眺望が楽しめる3方向に開放的な窓が魅力でした。また、多趣味なご夫婦らしい多くの荷物量を考慮する必要がありました。
プランでは、服飾やプライベートな物はウォークインクローゼットや扉付き収納に収め、それ以外の荷物はディスプレイ可能な配置にしました。LDKと寝室の境界には腰壁を設け、東西を一体化することで光と風の通りを確保しました。