豊橋市には通称、水上ビルと呼ばれる水路上に建つ商業ビル群がある。低層長屋状のビル群は豊橋駅まで連続し、上空から見下ろすとさながら人体の背骨の様だ。古くから商店街として栄え建物が老朽化した現在も商店街としての特徴を色濃く残し、文字通りアートやマルシェ等カルチャーイベントの発信地として街の賑わい創出の”骨格”を担っている。そんな人流豊かな水上ビル群のブロックに接した複合用途の空きテナントビルに文化交流拠点を作れないか考えた。立地は申し分無いが、築37年経過による劣化程度や改修に掛かる費用に比して賃料が高い事がネックだった。一方で貸主は、相続によ建物を引き継いだ為、劣化状況を特定出来ないまま10年近く借り手のつかない状況に悩まれていた。そんな折、貸主、借主、不動産業者が三位一体となった結果解決の糸口が見える。貸主はスケルトン解体と賃料譲歩を、借主はインフラ改修による建物価値の再生を、不動産業者は改修期間中のフリーレントを提案し、互いに利害は一致した。出来上がった間取りは3分の2を可動式家具で間仕切る可変性のあるゾーニングとした。通常はローカル作家の商品を展示販売する物品販売店舗及び事務所として、イベント時には全体を利用してマルシェにも対応する。今後は文化交流拠点として端材市やクラフト店などを予定している。様々な文化が融合し豊橋のヘレニズムを生み出す事に期待したい。
BEFORE
借り上げるのは1階のテナント、床面積は66.5m2。
既に貸主の配慮でスケルトンに解体した状態から工事はスタートした。
まずはインフラを再生する。
老朽化した各室からの給排水管を最下階のスラブを斫り取ることで入替えを行った。
建物周囲は地盤沈下が生じていた為、排水設備を設け沈下の進行を防ぐ対策も施した。
また十分な吸気口の確保、排気、除湿を機械換気で行う3種換気とし窓の無いテナント特有の湿気った空気環境を改善した。
その後のリノベーション工事においては内装仕上げは古材と建材の再生をコンセプトに設計し、建築解体材や歩留材を効率よく用いる事で材料ロスを限りなく減らし、背景にある物価高騰や環境負荷の問題へ配慮したリノベーションのモデルとしても活用する事を考え工事を行った。