背後の山から、海側に向かって風が流れる場所に物件が位置し、窓を開けると気持ちの良い風が室内を通り抜けます。この家の特徴は「廊下が主役」なこと。元々の間取りは玄関から真っ直ぐ廊下が伸びてその脇に個室が配置されているという典型的なマンションの間取りとなっており、廊下は暗くただ通過するためだけの場所となってしまっていました。面積の限られたこの物件において通過のためだけの廊下はもったいない!そんな廊下を“働くための場所”、“ご飯を食べる場所”、“歯を磨く場所”、“寝る場所”といった主要な機能を担う、家の骨格的な空間に変化させました。
玄関を入り左手に行けば、仕事をする場所を通過してリビングへ、右に行けば寝室へとつながるようになっており、トイレや収納といった機能の入ったボックスを中心にして、家の中は行き止まりのないドーナツ状の間取りとなっています。太い廊下の一部に机が置かれるとそこは仕事をする場所となったり、さらに植物が置かれ家族が植物ストリートと呼ぶ場所になったりと多彩な表情を見せる廊下=道が家に動きを与えています。
床は玄関土間から連続するタイルを敷き詰め、室内にはたくさんの観葉植物が置かれています。マンションでありながら外部の自然と連続するような感覚を持てるようにするため、床や壁、天井の素材の組み合わせに気を配り、人工的になりすぎない、野性味を帯びた空間になることを目指しました。
BEFORE
既存物件は前の住まい手が去り、水廻り等がリフォームされた後の状態でした。今回フルリノベーションをするに当たり、ユニットバスや食洗器、コンロ、便器等、新しい状態で入っていたものは一度取り外し、場所は移動させながらも再利用してコスト減に努めています。またPSの壁を取って出てきた配管はマンションの最上階であるため音の問題がないと判断し鉄管をむき出しにしたまま現しとし、敢えて荒々しい状態のまま存在させています。