施主が営む美容室の目の前に佇むマンション。
「中古マンションを買うならここしかない！」そう思える立地とタイミングで売りに出されたこの物件を施主は即決した。
築15年未満、直前まで居住者がいたその部屋は、「生活の場」として、必要十分な機能を備えていた。

施主はなぜリノベーションを希望したのか？
「カッコよくしてください。」
要望はシンプルだった。

清い要望に応えて、空間を構成する要素は白い塗装の壁、モルタルカウンター、シナの優しい木目と至極シンプルに。
ドア枠や巾木をなくし、空間の線を少なくすることで、これから配置される家具や照明が引き立つ空間となった。
キッチンはコンパクトながらも、必要十分な機能を備えており、炊飯器や冷蔵庫など生活感の出る物の目隠しにも気配りを。
ニッチには施主がこだわって選んだ食器たちが凛とした姿で並んでいる。

暮らしはじめた施主の姿は、この部屋に何とも似合っている。
どんな部屋で、どんな食器を使って、何を食べるのか。
どんなデザインの家具でくつろぎ、どんな素材の寝具で眠るのか。
空間と、それを彩る暮らしの道具達、それらが施主らしくなることで、「生活」は「暮らし」となり、延いては「暮らしの豊さ」に繋がる。
リノベーションは、「生活」を「暮らし」にかえることができる手段なのだ。