長屋の細長い形を逆手に取って壁一面に付けた壁面棚にはテレビ台やデスク、レコードのターンテーブル置き場までOさん夫婦のコレクションが並び、住まいの顔に。配置を悩みに悩んだキッチンは、最終的に動線を優先してアイランドに。「モルタルもしたい!タイルも捨てがたい!」と悩み、最後は選びきれずにどちらも組み合わせた洗面台は他には見ないデザイン。宿泊先で撮影した扉が忘れられず…」と、写真を参考にオリジナルで制作した扉がより空間を魅力的に。打ち合わせの終盤でひらめきいたオレンジ色のトイレには「目が覚める!」「ええやん!」と盛り上がり…完成した住まいは、いつでもワイワイ賑やかなおふたりのエピソードがたっぷり。
「自分たちがずっと好きでいられて後世にも遺せるような、隅々まで意味があるからこそ人に説明できる住まいにしていきたいです。」というOさんの言葉通り、将来ご家族や友人にリノベーションにまつわる思い出話をしていただける光景が目に浮かび嬉しくなります。
祖父の家から、Oさんらしさが溢れる住まいへ、そしてこれからも思い出を積み重ねる家として。Oさんの住まいのストーリーは世代を超えて続いていきます。
BEFORE
新居として中古マンションや中古戸建て、新築戸建ても検討したというOさん。型にはまった住宅になかなか購入の決心がつかなかったところにタイミングよく祖父の住んでいた長屋が空き家になり、引き継ぐことに。思い出の詰まった祖父の家ですが、せっかくなら雰囲気を一新したいとリノベーションを決意しました。
長屋特有の“味のある影”のようなものは残したい。でも光と風を横に通すために1階は大きな空間にしたい。自転車がおける広い土間は必須!カラーを入れた空間もほしい…。リノベーションに、「この建物だからこうじゃないといけない」というルールはありません。希望は全部、盛り込んでつくるOさんのすまい。SNSや雑誌でイメージを培い、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を読み込み…決まったテーマは『古民家×ミッドセンチュリー』。親族で集まって「さよならランチ会」を開催して、いざ、工事へ!