設計を手掛けた西山氏は「間取りも含め壁式構造の良さが生きた、なんかいい部屋」と、建物のポテンシャルから再生のヒントを得た。壁式構造は、建物を支える重要なパーツである壁を取り払うことができないため、空間構成の自由度が制限される。西山氏はこの構造をメリットとして踏襲し、内装で魅するプランニングに。
躯体現しが印象的なLDK。白の中に一部残すことで装飾のように引き立てた。
リビングの壁面には、素地の表情を生かした飾り棚を造作。
壁面の上にさらに壁を作り、団子跡が見えない素地の位置を計算して壁をくり抜く、というモデリング彫刻さながらの手の込み様。「躯体を抽象絵画のように見せたかった。これは壁式構造の家じゃないとできないこと」と西山氏。
造作メーカーにも足を運ぶほど吟味したキッチンは機能美溢れるステンレス天板、動線を鑑みて奥行も浅めに。
「キッチンの向きが変わって、家族もなんかいい感じになってきて。息子もたまに料理したり、簡単なものですけど。そういうシーンもいいなって。あとね、みんなダイニングでご飯食べないんです」と旦那様。
2LDKが1LDKとなり、カーテンで部屋を区切ってはいても暮らしのゾーニングは実は以前とそんなに変わっていない。
「いまだにリビングで、3人座ってごはんを食べるんですよ」
住まいがどれだけ新しくなっても変わらないのは、家族のいつもの風景。
BEFORE
No Architects/西山修建築設計事務所が手掛けた、壁式構造の共同住宅でのフルスケルトンリノベーション事例。
ご夫婦と高校生の息子さんの家族3人が10年ほど暮らしてきた住まい。
ここ数年、浴室など水回りの不具合に見舞われることが増えてきた。
DIYが趣味の奥様。壁にタイルを張ったり、洗面化粧台を造作したりと、これまでも幾度となく家のお悩みに立ち向かってきた。
とは言え、さすがに水回りはプロに任せなきゃ…ということで一念発起。
「どうせやるんだったら、全部やろう」
奥様渾身の力作を壊すことにはなるけれど、リフォームではなくリノベーションという選択で満場一致。
一家の希望は、生活していて不便だなと思うところの解決。遊び心はちょっとでいい、でもキッチンにはこだわりたい。と、直球かつシンプル。