「ツクルを全力で楽しむ。」リノベーション会社イー・ワークスが大切にしている行動価値基準である。代表の妻の実家は高尾山の麓。所有する土地は1.5反(1500㎡・450坪)ほど。個の力では20坪ほどの使用も限界だった。法律上、新居は建てられない上に土地の買い手は見つからない。高齢化で維持は困難という、三重苦を抱える荒れ地に新たな活路を与えられないだろうか?行き着いたのは、「ツクルで楽しむ・ツクルで繋がる・ツクルで笑う」という会社のバリューである。ただ畑をやるだけではない。とことん追求して無農薬・自然農法へチャレンジしている。全ての「ツクル」に奮闘した3年目、2/3以上の使用が可能となった。有機肥料、ネズミ取り、囲炉裏まですべて手作りだ。無農薬ゆえに農作物を猿や猪に食べられながらも、”ツクル”を全力で楽む。土地を次世代へつなぐ挑戦が実を結び、あらゆるチャンネルとして機能し始めた。これほど広大な荒れ地の活用ができた要素は3つ。一つ目は、自社社員に平日勤務と同様に、福利厚生の一つとして楽しんでかかわる仕組みにしたこと。二つ目は、ファーム周辺の畑を耕作する近隣住民の協力があったこと。三つ目は、オフィスのある板橋でファームの採れたての無農薬野菜を店頭販売しこれまでになかった近所の人との繋がりができたことだ。「リノベーションは建物だけじゃない」を証明する、ファームプロジェクトである。
BEFORE
高尾山の麓にある市街化区域。自然環境は良好で申し分ないが、問題は山摘みだった。都会から離れると、引き継ぐ代の若者の仕事がなく、年老いた高齢者での維持は困難、よそ者が近隣住民とのコミュニケーションを取るには壁が高いなど、日本のどこにでもある閉鎖的な環境が横たわっている。先祖から受け継ぐ潤沢な土地があっても、管理できるものがいなければ、放置されるのは時間の問題となっていた。高齢者だけの圧倒的なマンパワー不足。このままでは途方に暮れるばかりであった。イー・ワークスイムズである「ツクル」を元に全力でぶつかり、土地の再生リノベーションを果たそうと奮闘した。「リノベーションは建物だけでなく、土地にも活かせる」。信念を持って、土地と人、人と地域、人と人の関係をゼロから作り上げる作業を丹念に根気よく積み上げ、新しい価値観を掘り起こす日々であった。