吾輩は猫で、名前はみかんという。
ニューヨークで生まれ、色とりどりな人間が集まる大きな公園でニャーニャー鳴いていたのを覚えている。神奈川に移り住み、ここで初めて「パンなキッチン」なるものを見た。聞くとそれはリノベーションという人間の中で一番クリエイティブな行為の賜物であるそうだ。このリノベーションというのは時々吾輩にも気遣い、飛び弾や桁などを提供してくれる。しかしそれを使うかどうかは吾輩の勝手だ。
この家には書生はいないが、3人の人間が暮らしている。その中で母が主役のようで、彼女の意向に合わせた居場所が多く、ドラム、ピアノ、ミシン台、そして「パンなキッチン」がある。このキッチンでは「モールテックス」という元は灰色の素材が、橙色で暖かい雰囲気で仕上げられている。母はここを拠点に音楽と手芸の冒険に励んでいる。父のギターが部屋の隅に何台か置かれており、息子には専用の部屋が与えられている。
どこにいても趣味のアクティビティが楽しめる冒険的な暮らしの中心に「パンなキッチン」がある。そして吾輩はここで飲むビールをこの上なく愛している。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏...
BEFORE
築12年の築浅マンション。新築時から住んでいたが海外転勤を機に一時的に賃貸化し、帰国したタイミングで念願だったフルスケルトンでの改修を行った。上手く活用できていない収納などを取り払いLDKの広さを確保することで、複数のアクティビティスペースが実現した。築浅物件の大規模リフォームは前例が少なく管理規約や養生ルールがないため 柔軟に対応する必要があった。