saṃtati(サンタティ)〜他人間相続〜

戸建  /   エリア:愛知県  /   掲載日:2024-08-09

戸建  /   エリア:愛知県

掲載日:2024-08-09

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難航した物件探しは2年の歳月を費やした。運命を感じたというこの家も、古さを案じる売主の強い意志によって、建物付きでの売買は当初断られていた。「思い出ごと除却したい」という売主に対し、「家の空気感、家の記憶そのものを受け継ぎたい」という買主。このリノベーションは、買主H様のこの家へのリスペクトと思い描く世界観を売主に丁寧に伝え、承諾を得ることから始まった。

目指したのは、昭和の俤を纏うプラスティックヴィンテージの世界。暮らしに沿う若干の間取り変更と、外周部の耐震×断熱の性能向上を行っているものの、板貼りの壁や現しの構造材など、内装はほぼ原形を留めている。元々の床材は、玄関や寝室の収納棚、デスク、庭先のウッドデッキなどへと再生。

物件引渡しの席で初対面となった売主と買主には、驚くほど共通点や接点があることが明るみになる。
生業、グリーンが好きなこと、賑やかな女系家族の主人、そして買主H様が生まれた年にこの家が建てられたということ。

「相続」とは、サンスクリット語samtatiの訳語で、心の連続性・跡目を継ぐことを表す、元来は仏教用語である。
対話を重ね、良いところを変化しながら受け継いでいく。リノベーションは、精神を繋ぐプラットフォームだ。
記憶のバトンを受け取った買主H様、そして「相(あい)続く」この住まいを終に見ることが叶わなかった、売主のH様に捧ぐ。

BEFORE


before image

庭はジャングル、サイディングはチョーキングがかり至る所から雨漏りと、内外ともに劣化が酷く、当初は誰が見ても建物は解体せざるを得ないという状況下にあった。おそらく売主は、この家で最後まで絵を描いていたのであろう。買主は、絵の具が散乱する一室を前に、何か琴線に触れる一瞬も相まったのか一見しただけで、この建物を引き継ぐことを強く希望された。
売主・買主ともに直接会ってのやりとりが難しい中、我々は頑なに解体を望む売主の仲介者と面談を重ね、買主の想いを手紙に託し、さらに『既存住宅状況調査』を実施。明るみになった劣化状況を双方受け入れることで、最終的に売主の合意を得た。そして売主も「相(あい)続く」この住まいの再生を心待ちにされていた。

Before

After

    • 部門
    • 1500万円以上
    • 間取り
    • 4LDK+WIC
    • 費用
    • 2040万円(税込)
    • 形態
    • 自由設計リノベ
  • 性能向上リノベ 実施
  • <断熱性能>断熱材を全面充填および断熱サッシに全交換
  • <耐震性能>旧耐震建築物を新耐震基準適合まで補強
  • 費用に含まれるもの
  • 家全体 / 水まわり / 居室・その他 / 屋外 / 耐震補強 / 断熱改修
  • 施主支給設備(費用に含まれないもの)
  • ヴィンテージ照明など意匠表現上の重要箇所

物件情報


    • 築年月
    • 1981年5月
    • 構造
    • 在来木造二階建
    • リノベーション面積
    • 131.14
    • 施工期間
    • 6ヶ月
    • 備考

CREDIT


  • 設計 リノクラフト建築設計事務所 今泉幸崇
  • 施工 リノクラフト株式会社 代表取締役 今泉幸崇 担当 村田 麻由