数年前に東京から移住、家族4人暮らし。ご夫婦共にWEBディレクターをされているがリノベを機に焼き鳥と惣菜の店(酒場)を開業すべく店舗併用住宅へ。既存面積では手狭のため、木造在来工法で増築。同時に既存の軽量鉄骨造に木造を掛け合わせ、構造補強とそれらを意匠的に見せるつくりとした。
雑木に囲まれ “ぽつん”としていた環境を逆手にとり、開放感と安心感のある閉塞感とが相まった環境へ変えていく。建物の日射を遮る西側の大きな雑木の先には雄大な景色と開けた環境があり、雑木の伐採から始まる。
プランはあえてLDKを西側に配置。西側に大きく開口をもたせ、伐採後に目の前に広がった隣地は野花が咲く広い休耕地、その先には森、遠くを臨めば南アルプスという景色が自分だけの「庭」となった。南側は主寝室・子供部屋・ワークルームを配置。LDKからFLをぐっと下げ地面に向かって空間を絞り潜るような“あなぐら”に。南側に面した開口から見える緑は主寝室からは地面に寝そべったような距離感、子供部屋・ワークルームは籠り感をもたせた。
お店はカウンターを介して、惣菜等を販売。玄関ポーチを兼用した軒下で立ち飲みもできる。お店の中は自然の緑に対比するマットなミドリの塗装。店舗併用住宅というお互いがひと続きの空間でありながらの空間の切替にもなっている。外から店舗をみると周囲が緑に溢れた中でも同類色ながら印象的な店構えとした。
BEFORE
空き家バンクで見つけた築47年のこの建物は、元家主のセカンドハウスとして使われていた。構造は某ハウスメーカーの構造(軽量鉄骨造)という平屋であった。周囲は大きな雑木に囲まれ薄暗く、住宅街にありながら、“ぽつん”と“ひっそり”としていた。南側に続き間3間と北側に風呂・キッチン・トイレ・洗面・納戸のシンプルな横長構成で開口は南側に多く設けた住まいだった。
周囲が緑に囲まれているのにそれが良さになり切れず、広い敷地でありながらロータリーなどの敷地の自由度を遮る構造物もあり、それらの撤去していくことも計画に入れながら進めていった。