「元のお家にあった意匠は、どこまで残す?」。格子や梁などは、うまく残してリノベーション後も空間の“顔”となることが多いですが、では、「欄間」についてはどうでしょうか?欄間は日本の建築様式の一つで、花鳥風月などの彫刻が施されたいわば「伝統的工芸品」。ただ、職人技が光るような豪華絢爛な意匠だと“和”のテイストが強くなりすぎる……と敬遠されがちなのも、また事実。その文化的な価値をちゃんと理解し、リスペクトする想いをもつご夫婦がこの中古物件と出会い、「リビングにある欄間は、絶対に残したい」と決意。奥様にくわしく話を伺うと意外にも、ヨーロッパで見た風景についてのエピソードが決め手だったそう。欄間とヨーロッパが交錯する!?
「古い建物と新しいものが混じり合った街並みが印象に残っていて、特に心惹かれた街はドイツ南部のローテンブルク。長い歴史をもつ街ですが、第二次世界大戦で街の半分は損壊。再建の際には多額の支援があったそうで、大事にされてきた街に感銘を受けました。マイホームを考え始めた時から、“歴史を刻みながらも、これからも大切に時間を重ねていける我が家がほしい”と思っていて、欄間のもつ空気感が旅の記憶とすんなり結びついたんです」。
松竹梅の透かし彫りが施された欄間は、すっかり「和洋折衷の家」の顔に。照明を灯せば美しい影が壁に映え、「BARみたいな雰囲気になるんです」と大満足です。
BEFORE
リノベーションしたのは「売土地」として出ていた物件で、築42年の空き家は“ほぼ価値がないもの”とされていました。そんな中古物件に魅力を見いだし、惚れ込んだ一番の決め手は「大切にされてきた建物がもつ空気感」と話すオーナー夫妻。「家自体も、周辺地域も、良い印象しかなかったので即決です」と語ります。
“欄間を大切にする想い”が生まれるきっかけとなったドイツの旅からは、いくつかのインスピレーションをキッチン、玄関、リビング土間などで展開。さらに、知り合いから譲り受けたというソファや椅子などからも、“古き良きもの”を大切にする心意気が垣間見えてきて、“和洋折衷”のバランスを上手くとっています。