「起業するなら、近大へ」
”創立100周年に100社のベンチャー企業を産み出す"為に、起業チャレンジのきっかけ創出を目指した近畿大学の施設である。約90坪(2層)のコンパクトな細長い空間に、無限の可能性を生み出すためのリノベーションを実施した。
まず、この場所が持つべきキーワードを設定。「近大の歴史継承、スタートアップ → 芽生え、様々な変化を受容、新たな出会い→交流の場」これらを元に1つのデザインを施した。1つ目は"Identity(らしさ)":近大を象徴する赤レンガを踏襲し、解体中だった旧本館の緞帳を張地にアップサイクルしたベンチ等で歴史を継承。2つ目はTemporary(仮設):敢えて仕上げず仮設のようなデザインとし、利用者が気軽に使い倒せる場とした。3つ目は、Flexible(動かせる):多様な使い方ができるよう間仕切りを設けず可動性の家具を計画、配置した。「自由に使え、夢中になれる、自分たちの場所」とする為のデザインだ。
開業して1年、KINCUBA Basecampは、起業マインド旺盛な学生や教員らが気軽に集まり、交流し、新たな事業アイディアが生まれる、熱気溢れる場所になった。その結果、開業前には20社だった起業数が70社まで伸びている。ここを利用する人たちの人生の選択肢と可能性を広げ、大学の未来を創っていく、小さいけれど無限の可能性に満ちたリノベーションである。
BEFORE
近畿大学の西門前にある築20年の古い書店「梅の木ブックセンター」。最寄り駅から登校する学生は必ず前を通るため、誰しもがその存在を知っていた建物。しかし、書店という役目を終えた建物は2年もの間、寂しく存在していた。元々、白を基調としていた外観が、用途を持たないまま佇むことで、更に寂しさは増していたが、利活用方法を検討されはじめ、インキュベーション施設として新たな用途として生まれ変わろうとしていた。