リノベーションでは、いかに屋外空間を暮らしに近づけるかを考え抜き、住戸の中心を通っていた廊下を窓際へと移動し、ルーフバルコニーと室内をつなぐ動線を“強制的に”作り出した。さらに、室内が約67平米と少しコンパクトなこともあり、思い切ってダイニングを外に出してしまい、ルーフダイニングと名付けた。ルーフダイニングも含めた空間が生活空間となり、広く、多様な過ごし方ができる住まいができる。
もうひとつ、注目してほしいのは、実は大きく風景が変わった室内だけれど、和室を解体してキッチンの位置を移動した以外は大きな間取りの変更はないこと。ストレージは既存の収納を活かして作り、水回りの位置は既存のまま。元々キッチンだった小部屋は、ちょっとこもれるDENへと生まれ変わった。
不動産価格や工事費の高騰でやむなく工事範囲を絞ってリノベーションの計画をすることが多くなってきた昨今だが、それでもまだまだできることはある!否、既存の建物を活かしながらリノベーションを計画するからこそ、思ってもみなかった空間が生まれて、結果的におもしろいものができることもある。既存ストックをいかに読み解き、活かし、楽しみながら次につなぐか。リノベーションはまだまだ奥が深い!
BEFORE
既存建物(ストック)の最大の特徴は室内とほぼ同じ広さのルーフバルコニー。明るく心地よい風がふき、広い空が感じられる。遠くには西宮のシンボル、甲山。阪神間の主要駅のすぐ近くという立地からは想像できない開放感。それなのに、リノベーション前の間取りはマンションの常で上下階と同じ、ごく一般的な3LDKでまるでおまけのようにルーフバルコニーがついている状態だった。
忙しかった一日の終りは空を見上げながらビールをぐびり。朝寝坊した休日も簡単なフルーツを並べてブランチしたら、それだけで贅沢な気分。出かけたくない雨の日はパラソルの下で静かに本を読むのもいい。屋外空間が暮らしにあるだけでこんなに豊かになる…どうルーフバルコニーとのつながりを作り出すか、リノベーション計画はそこから始まった。