都心の幹線道路沿い、バブル期に建てられた事務所ビルのエレベーターを最上階まで上ると、その外観からは想像がつかない豊かな空間を持つ約170㎡のメゾネットが現れる。
幹線道路沿い事務所ビルのペントハウスという条件は高級賃貸マーケットでは特殊である。しかし、事務所ビルならではの自由度の高い平面、約3mの天井高、大型のルーフテラス、2つのフロアにあるエレベーターホールと玄関など、通常のマンションにはない魅力があった。そこで、これらを強みとして捉え直し、都心の隠れ家的ロフト空間として再生することを企図。
躯体現しや天然石の素材感を生かした内装、天井高約3mの開放的なメインリビング、BBQのできるアウトドアリビング、ジャグジースパ、事務所・スタジオ・アトリエなどに利用できる多目的スペースを設え、都市生活の様々な暮らしのシーンを取り込み、魅力的なスケルトンの中に再構成。住まいであり、仕事場であり、心身を整え、集い、楽しむ場でもある、従来の住宅の範疇に納まらない、多様なライフスタイルに対応できる場とした。
各フロアに玄関を確保、住宅兼仕事場としての賃貸ニーズにも対応することで改修前から2倍以上に賃料アップ、周辺相場を上回る賃料ながら、早々に入居者も決定した。小規模事務所ビルの稼働率・賃料低下という課題に対して、新しい都心居住のスタイルを提案し、リノベーションの可能性を示した。
BEFORE
東京23区のオフィスビルの約9割を占める中小規模ビルは、バブル期に建てられた築20年以上の物件が多く競争力を失いやすい傾向にある。そんな小規模事務所ビルの最上階にある元オーナー住戸であった本物件。現オーナー(事業主)からは、これを賃料100万円超の高額賃貸としてリノベーションすることが求められたが、そこには建物の外観やエントランスからは想像できない魅力溢れる空間があった。