45年以上、再販事業に携わる立場として、たくさんの暮らしを聞いて触れてきた。
住まい手の「どう暮らしたいか?」という問いの答えには、「現実」けでなく、理想や憧れなど豊かな「想像」が混ざりあっている。そして、住まい手が想像した暮らしを、住まい手自身で積み重ねていくことは、間違いなく人生の幸せな時間であり、これこそがあなたの物語である。
1枚の絵画から始まった。トランプや薔薇、地図に珈琲...。「集積空間」と題された日本画は、画家の様々な思い出のモノが描かれ、色や筆致の不規則な重なり合いが、出会いや別れ、思いがけず手にする幸福、戸惑い、慈しみ。まるで人生を描いているように見えた。
白から黒。黒から白。私には、全ての色の両極にあるイメージがあった。現実と想像が混ざりあった暮らしのイメージを、グレーの色に当てはめた。塗りやニュアンス壁紙など、雰囲気ある濃淡で想像と現実をふわふわ行き来する曖昧さを表現した。明確な境界線をつくらない、その曖昧さの中にこそ、グラデーションがあり、幸せな時間が宿ると考え空間デザインに落とし込んでいった。
Prologue
現実と想像を行き来する
記憶の中で微笑むあなたは
曖昧で
美しいグラデーションを纏う
BEFORE
元々、空間条件の良い邸宅であったが、4部屋の居室を確保していたため、LDKが窮屈であった。リビング横の和室を繋げ、風呂と洗面の水廻りを十分に確保するなどして、最大限に空間のゆとりを感じるように考えた。そして同時に、再販事業者として「幸せの宿る暮らし」は何かと考えた。