難波曳家伝 ミナミの土蔵

その他  /   エリア:大阪府  /   掲載日:2023-09-16

その他  /   エリア:大阪府

掲載日:2023-09-16

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renovation image

大阪ミナミの中心、難波、それもワンルームマンションのエントランスを抜けた奥に土蔵が存在するなんて、誰も思いはしないだろう。建築時期は不詳、戦時中の空襲に耐え、曳家を経てこの地に移動してきたという。
リノベーションでは外壁に左官材を施し土蔵本来の姿を再現。最低限の修繕とインフラ工事を行い、戸前と内装にはあえて手を加えなかった。「余計なことはしない」それが歴史を経たこのストックの魅力をユーザーに伝える最善の手段だと考えた。
工事後に入居したのは器の販売と金継ぎを行う職人。海外の人へも金継ぎの技術を伝えたいという思いで物件探しを始めてすぐ、この土蔵と出会った。土壁や漆喰仕上げの内装は金継ぎで必要な調湿環境にも最適なこと、日本の伝統であり繕いながら後世に残し継いでいく存在であることにも通ずるものを感じたという。入居者も、オーナーも、私達も、この人のためにストックが再生したと運命を感じるような出会いだった。
希少で価値のある建物が、惜しまれながらも解体されていく。古い建物を維持し、賃貸するには、時間も労力も必要である。オーナーがその価値を認識し、リノベーション業者が建物の本来の魅力を損なわない工事をし、不動産業者がユーザー目線での企画販促を行う、そのすべてが不可欠である。
本来の魅力と立地の特性、入居者のニーズが絶妙にマッチングし、土蔵はミナミの地で新しい時間を歩み始めた。

BEFORE


before image

物語性と意外性のあるストックだが、長らくその魅力を活かされないまま、倉庫として使用されていた。小屋裏の梁に貼付された「明治29年の大修理の記録板」からも長い歴史が感じられる。
外装は経年で崩れた土壁を覆うようにサイディングが貼られ、簡易な補修が行われたことが伺えるが、本来の趣を無くしてしまっていた。内部の状態は非常に良く、建築当時の時姿を保っていたが、雨漏りと床の一部にシロアリの被害がでたことを機に修繕と新たな活用方法を探ることとなった。
その希少性の高さから賃貸商品としての再生を目指すことに。一見、路面店でないことを嫌厭されそうだが、SNSを利用した集客も当たり前となった昨今、逆に魅力だと考えた。そして、収益を生み修繕維持費を捻出できれば、少しでも長くこのストックを後世に継いでいくことができると考えた。

Before

After

    • 部門
    • 無差別級
    • 間取り
    • -
    • 費用
    • 700万円(税込)
    • 形態
    • 賃貸リノベ
  • 費用に含まれるもの
  • 水まわり / 屋外 / その他
  • 施主支給設備(費用に含まれないもの)

物件情報


    • 築年月
    • 1896年8月
    • 構造
    • 土蔵造2階建て
    • リノベーション面積
    • 52.08
    • 施工期間
    • 2ヶ月
    • 備考
    • *築年数不詳のため、最も古い修理記録を築年月に記載

CREDIT


  • 施主 丸二商事株式会社
  • 設計 株式会社アートアンドクラフト
  • 施工 株式会社アートアンドクラフト