3人の娘が成長し手狭になった75㎡、3LDKの持ち家マンション。広さは欲しいが、今の家族にとって心地よい暮らしを考えたとき、「住み替え」が必ずしもベストな選択とは限らない。このプロジェクトは、平米数以上に広く・豊かな時間を過ごすための「家族の最適解」を詰め込んだ事例だ。
75m²の空間に、洋服デザイナーの奥様のアトリエと在宅勤務のご主人の書斎、2つを確保しようとすると、残されたのは家族5人に対し約60m²のスペースだ。限られた空間で広々と生活するにはどうすればよいか? 打合せを何度も重ね、①個室を持たない、②生活感を出さない、という2つのテーマが導かれた。
寝室は1つで5人分の布団が並ぶ最小限の空間に。 子ども部屋ではなく3人並んで勉強できるだけのスペースを設けた。要素をミニマムに構成したことで最も眺望がよい場所に約18帖のリビングを実現できた。
神は細部に宿る。収納力、広がりを感じるフルハイトドア、白基調での統一、巾木やコンセント位置など細部までこだわった生活感のない空間は、十分とは言えないスペースも広々と感じさせてくれる。住み替えではなく小さな持ち家リノベを選んだことで価格高騰の波にも対抗でき、結果的に数千万円の節約になる。
いつか巣立つ娘たちと過ごす「今」を選んだ施主様。シンプルだが愛に溢れた豊かな家に生まれ変わった。
BEFORE
購入当初は3LDKのよくある間取りであった。 眺めの良い方向ではなくなぜか隣のマンションに向いたリビングや、 外出時に混雑してしまう小さな玄関、 各部屋にばらばらに設けられた中途半端な大きさの収納など、 住んでいるからこそ、家に対する不満が明確であったのも設計の手助けとなった。
施主様はゆとりある広い空間と最低限の書斎を求め、DIYで一部の壁やクロゼットを取り払い、LDKの隅に壁を立てていた。しかしDIYだけでは間取り変更の自由度に限界がある。
ご自宅に足を運んでの設計相談を何度も重ね、新しい理想の住まいを具体化するところからスタートした。