これからの団地リノベのあり方を問う。

マンション  /   エリア:兵庫県  /   掲載日:2023-09-07

マンション  /   エリア:兵庫県

掲載日:2023-09-07

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今年2月、神戸市須磨ニュータウンの名谷団地の一室が、官民連携によるモデルハウスに生まれ変わった。月3回の公開日にはリノベを検討するさまざまな世代の人が訪れ、実物を肌で感じながら自身のリノベのイメージを膨らませている。

玄関を開けると県産杉の板壁からふんわりと木の香りが漂い、すぐ横のウォークイン収納はベビーカーを置けるほど広い。個室では室内窓越しに家族の気配を感じながら在宅ワークができ、冬は暖房なしで過ごせる日も。室内干しができる広々とした水回り・脱衣所からは、周囲をぐるりと回れるキッチンにかけての動線がスムーズで、団地での快適な暮らしを約束する。

この部屋のコンセプトは「団地ぐるぐる」。数々の団地リノベを手がけてきた弊社が、断熱・家事動線・地産地消を軸に、団地リノベにおいて先行してきた「安くてユニーク」の価値観を、「暮らしの質」にシフトすることで、団地をどんどん住み継いでいきたいという思いでプロポーザルに提案。暮らしやすさを重視する主催側に響き採用された。

想定ターゲットは子育て世帯だったが、実際には同団地に長年暮らす高齢の住民が見学に訪れることも多い。玄関収納や水回りの広さに感動し「いずれは息子家族が住むから」と、同じ間取りでリノベの相談をいただくことも。期せずして、空き家になる前にリノベによって住まいの質を高め、次の住み手に継ぐという動きも生まれつつある。

BEFORE


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築46年の名谷団地周辺では、行政の再開発が進む。その一環で神戸住環境整備公社は「子育て家族の新たな住まい方・暮らし方」と掲げ団地リノベのモデルハウスを企画、提案を募った。
これに対し、団地を多く手がけてきた弊社は「暮らしの質」にフォーカスした設計を提案。これまで、予算を優先した結果カビや寒さに耐えられず短期間で退去する例を何度も見てきて「団地リノベのあり方」を追究する中で出した、一つの答えである。
玄関収納や脱衣所がない、結露が酷い、など団地特有の課題に着目し、壁断熱に加え、思い切って玄関と水回りの面積を1.5倍に拡大。小さな家族を想定し、個室は住み手が状況に応じて自由に使えるよう余白を残した。
団地リノベを終の住処として選ぶ人は少ない。質の良いリノベをしておけば手放した後もきちんと流通し、空き家化を防げる。団地がしっかり住み継がれていくことを願い、官民連携ならではの発信を目指した。

Before

After

    • 部門
    • 800万円未満
    • 間取り
    • 3LDK+SCL
    • 費用
    • 699万円(税込)
    • 形態
    • 自由設計リノベ
  • 費用に含まれるもの
  • 家全体 / 水まわり / 居室・その他 / 断熱改修
  • 施主支給設備(費用に含まれないもの)

物件情報


    • 築年月
    • 1977年12月
    • 構造
    • RC造
    • リノベーション面積
    • 62.07
    • 施工期間
    • 2か月
    • 備考
    • 神戸市では、都市ブランドの向上と人口誘引につなげるプロジェクト『リノベーション神戸』を名谷エリアにおいても進めており、子育て世代に優しい環境づくりにも取り組んでいます。
      この取組の一環として、既存住宅の流通促進、若年・子育て世帯の定住促進を図るため、(一財)神戸住環境整備公社において、既存住宅を購入し、リノベーションを実施し、オープンハウスの公開などを行っています。

CREDIT


  • 施主:一般財団法人 神戸住環境整備公社
  • 協力:神戸市
  • 設計:株式会社フロッグハウス 代表取締役/清水大介 担当/笹倉みなみ
  • 施工:株式会社フロッグハウス 代表取締役/清水大介
  • 文:村崎恭子
  • 写真:藤田温・村崎恭子・一般財団法人神戸住環境整備公社・株式会社フロッグハウス