フレームで仕切られた開放的な空間。このフレームは未来のための「アウトライン」である。
リノベーションのきっかけは、第二子が産まれて賃貸物件が手狭になったこと。この先子どもが何人になるか、1歳と3歳の子ども達にいつ個室が必要となるのかはまだわからない。「間取りを自由に変えられる工夫」が設計の要点となった。
住宅に可変性を、と言われて久しい。当初は広い空間を用意して、必要に応じて後から壁で仕切る手法が一般的だ。しかしいざわが子に部屋を分け与えようと壁を立てる際には、改めて建材費や人件費といったコスト・工事内容の打ち合わせ・工事申請等が必要となる。可変させるためには様々な費用と労力が発生しうるが、それは果たして真に住まい手の暮らしを考慮した「可変性」なのだろうか。
本事例では将来的に仕切るであろう区画に、柱材で組み上げたフレームを予め設けた。既にアウトラインが用意されていることで壁を立てる工程が簡易化され、お金や手間などのあらゆるコストが減らせるのだ。また、工事の難易度が下がることでDIYで壁を立てる事も容易になる。アウトラインは家具配置のガイドにもなるため、模様替え次第で多様な使い方が楽しめる。
これは間取りのみならず暮らし方の可能性も広がる、新たな「可変性」の提案である。
アウトラインの行方は幾通りにも広がっている。あなたならばどのように行方を導くだろうか?
BEFORE
本物件は、火災によって室内のほとんどが焼け落ちていた。
玄関扉を開けると同時に鼻を突く、あらゆるものが焦げた臭い。掃き寄せられたかつての下地材に、畳と思しき黒焦げの残骸。火災の凄まじさを物語る、残存したビニルクロスやブレーカーの溶け落ちた様。
現況に左右されないスケルトンリノベーションという手法が存分に発揮できる環境であった。
ここで新たに暮らすと決意した家族に向けて、広いリビングを確保しつつも、子どもたちの将来のために暮らしの可変性を持たせることが課題に。
広大なルーフバルコニーも一つのリビングと捉え、各所との繋がりを持たせる。また水回りや収納を「不動」、リビング等の可変性を持たせたいエリアを「流動」としてゾーニングした。「不動」はコンパクトかつ効率的にまとめ、最大限に確保した「流動」にアウトラインを設けることで、間取りと暮らしに無限の可能性が生まれるようにした。