3 + one 〜双子の姉妹と母と犬、この山海と共に生きる〜

戸建  /   エリア:愛知県  /   掲載日:2023-07-04

戸建  /   エリア:愛知県

掲載日:2023-07-04

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山海の穏やかな気配を近くに感じる旧渥美郡赤羽根町にある古民家。そこに住み続けるべきかの相談を受けた。周囲の意見は建替や市街への移住など、古民家リノベに対して肯定的ではなかったが、施主である双子姉妹の姉は周囲の意見に対し、この家を守り生き続ける事への決意を持っていた。そこで我々は本来の建物が持つ長所を最大限に活用し、現代的な住環境構築への解決を試みた。3人の女性と1頭の犬が暮らすのに十分な広さを定義し、不要箇所の減築を提案。建物を本来の形状に戻す事で美観を整え、バランスの良い耐力壁の配置で耐震基準を満たし、断熱材を建物外周に充填し荒壁の吸放湿性と古民家の風情を損なう事なく温熱環境を改善する計画で設計的要素からリノベに対してのネガを排除し着工となった。利用できる荒壁を残しながら必要な耐力壁を設ける工事は難航し、折しも人手不足と資材高騰も負担となったが、施主と女性スタッフも一丸となって施工に加わった。これは、元来の普請のあるべき姿で取組めたのではないか。素材や工法は伝統的なアプローチを活かし、海岸方向に面した外壁は塩害対策で重用される焼杉を採用。その他木部は椹を用い耐候性なども考慮し、建物が持つ世界観を再構築。常春と言われる地域であるが、夏の風雨や通年の潮風は優しさばかりではない。それでもそこに住み続ける意味が、築130年の歴史そしてこの山海と共に生きる決意として古民家の姿に現れている。

BEFORE


before image

築130年と聞いている古民家。田の字型に和室を並べた間取りに南西北3面が縁側、東面は土蔵で囲まれていた。長い年月をかけ繰り返された増改築により建物は元の形を有しておらず、無秩序な増築により低すぎる天井、狭すぎる廊下、歪んだ木製建具からはすきま風、そして海岸線を見下ろす高台にある立地から潮風が強くトタンによる外壁は錆びが進み、簡易な修繕では現代的な住環境を得られない事は明白で、これからの生活を考え是正するべき課題の多い状況であった。伝統構法は本来、複雑な小屋組で地震や風圧力をしなやかに受け止める性質を持つ。この性質を補うべく、建物全体に柱脚土台を補強し敢えて応力の小さい耐力壁を多数配置する事で耐震基準は上部構造評点1.0以上を達成。断熱材を建物外周に充填し、窓開口の面積に配慮する事で断熱等級5相当であるUA値0.60を達成。リノベに対してのネガを排除した事で、建替や移住する理由は無くなった。

Before

After

    • 部門
    • 1500万円以上
    • 間取り
    • 161.43㎡
    • 費用
    • 3300万円(税込)
    • 形態
    • 自由設計リノベ
  • 費用に含まれるもの
  • 家全体 / 水まわり / 居室・その他 / 屋外 / 耐震補強 / 断熱改修 / その他
  • 施主支給設備(費用に含まれないもの)
  • 古来、家づくりの中心は施主であった伝統を受け継ぎ、室内壁部の漆喰や塗装の施工に加わった。

物件情報


CREDIT


  • 施主 愛知県田原市在住 柳原千代
  • 設計 リノクラフト建築設計事務所 今泉幸崇
  • 施工 リノクラフト株式会社 今泉幸崇
  • 外構 株式会社rezotto 待井大輔
  • 撮影 BIG28 写真家 田中寿治