福岡市は大名のど真ん中にあるマンション。再販リノベである。築40年と老朽化もさることながら区画形状は異形で、特に水回りの動線が確保しにくい区画だった。激戦区のエリアでは一般的な再販リノベを行ったところで簡単に売れるものではない。しかも管理規約では“事務所はNG”で住宅に限られる、限定された用途だったのだ。そこでテーマとしたのは「Work as Hobby」“仕事は趣味である”。作者は就寝ギリギリまで仕事をしたいタイプで、仕事をいわゆる“事に仕える”とは思っておらず趣味の一環でプランや企画を考えることが楽しいと思っている人間である。傍から見るとただの「仕事人間」では無いかと見られがちだが、仕事人間という呼び名がとにかく好きではない。趣味である。作者と同様の人間も必ず居るであろうペルソナ設定を行い、事務所ではない“住居としての趣味部屋”とした。玄関土間を区画の中央まで伸ばし柱や梁を組んだ櫓を設け、中廊下を演出することで農家の家のような土間のある暮らしを表現。キッチンと反対側には趣味の部屋があり、キッチンに立ってもワクワクする趣味の部屋が見える。水回りはホテルライクな造りにすることで動線の難を利に変えた。“仕事は趣味である”。これは事務所併用住宅という旧来の概念を今の時代の“暮らし方”にアップデートした代表すべき事例だと自負している。