今までマンションで暮らしていた施主様ご一家。ご実家である、およそ築100年の長屋にもう一度住みたいとの思いからリノベで理想の住まいへ蘇らせることになりました。まず建物全体の耐震性・耐久性を抜本的に改善。一般的な部分補強ではなく、傷んでいる柱を新しい柱に入れ替え、今までになかった位置に柱を新設するなど構造体も大幅に補強しました。ただ長屋の構造上隣家と戸境壁を共有しているため、戸境壁内部の柱を撤去したり、新設したりすることはできません。そこで戸境壁の住戸側から柱を抱き合わせるなどの補強を施しました。また壁表面の仕上げを変更するにあたっても、壁厚が薄いため作業には慎重さを要しましたが、繊細な技術により仕上がりは美しいものとなりました。施主様の希望は「風がまっすぐ通り抜ける空間」。そこで1階の両端に窓を設置し、家中に新鮮な空気が循環するように設計。窓を開けると風が流れるように行き交う、なんとも清々しい空間になりました。視界も開け、空間が広がるような感覚を覚えます。内装は家の歴史を尊重しシンプルかつミニマルなデザイン。今まで大切にしてきた暮らしの歴史が力強く伝わり、一つのものを大切に守っていくことが豊かさに繋がると教えてくれるようです。
BEFORE
関東大震災直後に建てられた、およそ築100年の歴史ある長屋。施主の実家であるこの長屋を全面リノベしました。築年数が古いことから、既存の柱や梁、土台といった構造体の劣化や、量的な不足も疑われ、耐震性が不十分であることが推測されました。また戸境壁を隣戸と共有しているため、施工は繊細な作業となりました。