自分の好みを思う存分反映できるリノベーション。好きなものを集めたら、おもちゃ箱を引っくり返したような楽しい部屋になる人もいれば、統一感のあるトーンにより静謐な佇まいの空間になる人もいます。
今回のオーナーは、後者のタイプ。「無機質でシンプルなインテリアが好き!」という言葉の通り、空間の主役に据えたのはモールテックスのキッチン。セメントの質感を持ちながら、曲げやたわみに強いモルタル素材がLDKに穏やかな表情をもたせています。
オーナーは以前から家具はどれも将来行うリノベーションを見据えて選んできた方。そのため、カラーリングだけでなく、サイズも空間にフィットするようにリノベーションしました。
ご要望は、実家にあるという着物を収納するための桐箪笥が入るスペースをウォークスルークローゼット内にほしい。さらに将来、部屋を仕切り個室を増やす場合に備えて照明スイッチとテレビアンテナを室内2箇所に取り付けたい。10年後、20年後の生活まで見越したお施主様の計画性には終始感心させられた。「例えば20年後、仮住まいが必要になるようなフルリノベーションをするエネルギーは、もうないと思うから」。最大限の住み心地の良さを、いま現在はもちろん将来的にも、最小限の労力で得られるよう、すでに考えられているオーナーに導かれるように実現した、まさに共同プロジェクトのリノベーションでした。
BEFORE
東京都大田区に建つ築21年の中古マンション。もともとは一般的な分譲仕様の内装が施された約54㎡の2LDKでした。2人〜3人家族を想定したと思われるプランは、開口部に面したリビングダイニングの隣に洋室があり、部屋数こそ確保されていたものの肝心のゆとりや開放感が今ひとつ。シングルライフには少しもったいない間取りでした。またキッチンにも扉があり、区切られた場所が多い空間構成。好みの内装で、伸びやかなシングルライフを謳歌するには、やはり少しそぐわない間取りだったのです。