これだけの規模のリノベーション自体が仙台では珍しかった上に、建物完成後にも地域では初に近い取組みが続いた。ひとつは無印良品、サンワカンパニーの商品を全面に打ち出したモデルルーム設置。首都圏でも賃貸住宅でモデルルームを設置するのはそれほど多くないが、仙台ではまだめずらしかった。もうひとつがウッドデッキを利用したオープン当日のマルシェ開催だ。飲食、グリーンの販売、無印良品による出店などもあり話題となった。今後は地域に根付いたイベントを開催する予定である。
もちろん賃料は改修前の3~3万5000円から7万円前後になり、以前の額でごくわずかの住戸しか埋まっていなかった時代に比べると毎月の家賃収入の大幅増となっている。
建物の状態の良さと立地、その2つからリノベーションを判断したのが吉と出たわけである。またハードとソフトの両面から、いかにして今の時代に合わせていくのかという点がポイントになった物件である。
BEFORE
築55年以上が経過したRC造、3階建て3棟のアパート。1965年に奥の二棟、翌年に公道寄りの一棟が建設された。築年でいえば55年超ということになる。老朽化が進み改修直前の家賃は3万円~3万5000円ほどの低額で3戸のみ入居といった状況。これまでの仙台ではこういったものは建替えられるのが一般的だった。ところが、この土地の所有者は思い出の建物を取り壊すことで以前の土地の記憶までがなくなると考えた。幸いにして東日本大震災を経た建物なのにも関わらず、強度的には問題がないという調査結果がでた。結果、給排水その他の配管をやり直し、断熱サッシへの入れ替え、設備その他の更新、間取りの変更と、コンクリートの躯体を残して、それ以外はすべてやり替えている。もちろん断熱では新築レベルの性能を備えた建物になっているなど住み心地も大きくアップしている。