プログラマーのお仕事をされている関係上、室内にいる時間が主と考えられるので、ありきたりですが長く安心して住めること、かつ、オンとオフのメリハリのつけやすい住まいであることをコンセプトととらえました。
室内環境の整備は必須でしたので、単に雨漏りの修繕にとどまらず築年数も考慮。スケルトンにして基礎・金物の補強、耐力壁の再配置などで耐震性能を向上。更に床、壁、屋根の3方を気密性、断熱性の高い発砲ウレタンで覆い、室内のどこに移動しても温度を一定に保ち、体に不必要な負担を掛けないよう配慮しました。
自宅でのお仕事というメリハリのつきにくい生活の中、スケジュールの切り替えがスムーズに行えるように、趣味を楽しむアトリエ兼寝室である個室と、広いLDKという単純な間取りに。白と淡いグレー、明るい木目で内装をまとめて視覚からの刺激を抑え、自由度の高いミニマムなインテリアスタイルにしています。その中で変化をつけたのはリビングの床高。ステップダウンフロアに変更し、視線の高さを下げることで窓外に広がる木立の地面とのレベル差を抑え、風景の中に入り込むかのような臨場感のあるリビングをつくりました。集中しやすくストレスの少ない静かな環境の中、お伺いするごとにベッドやデスクの位置を移動されていて、風景の変化を楽しんでいらっしゃいました。
BEFORE
築50年ほどの別荘地に建つ祖母の家。手入れの行き届かない状態となって時が経ち、ウッドデッキは朽ちて穴が開き、屋根にはコケが生え雨漏りもしていました。別荘地の中で本に囲まれて暮らしていたお祖母さまのところにはよく遊びに行っていたという施主さま。空き家になってしまったその家を活かしたいと親族で相談した結果、駅までの近さや都心への利便性など住む場所に限定されないお仕事をされている施主さまが引き継ぐことになります。一人で暮らすには間取りに問題はありませんでしたが、雨漏りにより傷んでいた室内は木製のサッシで、建物の強度に加え、冬の寒さが思いやられる状態でした。まず安心して住める状態にしてほしいというのが第一希望。住まいと仕事場が同じなので無駄なくシンプルに、ミニマムな住まいにしてほしいというご希望でした。