私たちは、ある海外の方が日本を評した言葉「日本人は美しい宝石を捨て、砂利を拾う」というアイロニーを常に心に留めています。私たちの役目は残された宝石である旧い民家を守り活かすこと。こちらの大阪長屋も建物に備わった魅力を活かすべく、リノベーションさせていただきました。
長年空き家だった長屋のため、まずは安全を期した補強工事を。腐っていた梁は新しい物に交換し、今後50年は安心して使えるように耐震工事を行いました。
エントランスから続く黒御影石は、そのまま黒御影石のバスルームへ。バスルームから出た坪庭には水盤を設置。水盤の光が反射するのは、コンクリートをはね出してつくった浮かぶガラスの茶室です。2階のベッドルームは和室をそのまま墨色に塗装するだけで、宝石の輝きを取り戻します。
茶室に入る前に手を清めていただけるよう、キッチンのシンクは解体された家からレスキューしてきた蹲(つくばい)を加工して再利用しました。
黒御影石でつくられた漆黒の湯舟につかると、そこには宇宙が現れます。
その宇宙から見る、小川貴一郎氏のアート。
かつて日本の家屋では、神様と仏様がおられる神聖な空間、そして家族の寛ぎの空間とが隣合わせにあったものです。今回は失われてしまった神聖な空間を、現代的なデザインで再現しました。
BEFORE
こちらは、大阪心斎橋駅から徒歩5分という好立地。今も大阪の町に数多く残る趣深い「大阪長屋」ですが、ここ数年は空き家状態が続いていました。長年雨水にさらされ、一階天井の梁の一本はほぼ腐ってなくなっていました。
施主様の「子供の頃に住んでいた思い出の家を、壊さずに残したい」というご希望、そして今後はこの建物をどのように活かすのが望ましいのか、共に考えさせていただきました。