北海道の長い冬。そんな北海道の暮らしを心地よく、より楽しむために断熱は既存の天井断熱から屋根断熱へ改修した。さらに、ブロックの内側に施工されていたグラスウール内断熱は、150mm厚の外断熱(ビーズ法ポリスチレンフォーム)に改修。見た目よりも広く感じる開放感のある空間を実現し、壁内結露を防ぐ効果もある。内壁はコンクリートブロックを表しにすることで、味わい深い素材の質感を実現。外壁左官や内部塗装も通気性のあるものを使用しているので、まるで家全体が息をしているようだ。
リビングには、揺らぐ炎に五感で温もりを感じられる薪ストーブを設置。無垢のフローリングは、冬のひんやりとした足触りを防いでくれる。元々の家で使われていた古材は、内窓や明かり窓として活用した。古きものと、新しい技術が調和していて、大切に受け継ぎたいもの同士が調和する空間だ。雪国では、助け合わなければ生きていけない。寒さ厳しい冬も、暖かく、笑顔で暮らせるように。地方の人口が減りゆく北海道で、この景色や温かい人々、夕焼けに照らされる祭りの魅力を受け継いでいくために。穏やかな景色が流れる町のリノベーションは、今まで気付くことができなかったこの町の魅力を教えてくれた。
BEFORE
築35年で当時は札幌土木現業所の職員用の建物として作られた、補強コンクリートブロック造の二軒長屋。昭和40〜50年代に北海道で建設が進んだコンクリートブロック造の建物は、建て替えにより次々と姿を消している。一年を通じて穏やかな気候の長沼町だが、冬は日本海から西・北西の強い季節風が吹き、にわかに多量の降雪をみることも。のどかな田園風景が広がる町は、移住先としても人気だ。壁内結露などの問題を解消し、北海道に残る貴重な遺産に、新たな息を吹き込む。