私たちが提供し評価するのは上質なリノベーション空間だけでいいのだろうか?情報やものが溢れる現代において、「自分らしさ」という最適解を見つけ出せる「人」を育てることがこのプロジェクトのミッションだ。
舞台となるのはありふれたワンルーム空間。壁と床に安価に購入が可能な合板を規格サイズのままのビスで貼るところから始まる。その合板は住人の手に委ねられ、試行錯誤の対象となる。色をつけるも、別の種類の合板と交換するも良し。カットして棚として作り変えたり、直接絵を描く人もいる。
住人にとっての可変性は、管理サイドにとってのメリットにも変換される。DIY可能な範囲を明確にし、交換しやすくすることで「何されるかわからない」不安を解消し、安心して自由さを提供できるシステムとなる。
DIYというフィルターで集まった住人同士のコミュニティもデザインする。オンライン上でグループを作り、お互いの部屋の鑑賞ができるようにする。アイディアを共有することで刺激し合い、さらなるDIY欲の高まりを生み出す。
ワンルームタイプの部屋は住宅キャリアのスタート地点。その地点で自らの手で試行錯誤し暮らしを楽しむことができれば、これからの住まいに希望を見出すことができる。そんな人を生み出すことが、日本の住文化やリノベ産業をもっと楽しく育てることができるのではないか。そんな大きなビジョンをこの小さな部屋から妄想している。
BEFORE
同エリアで同タイプの空室が50部屋あるような、ごく普通のワンルーム。
このままでは家賃を下げることでしか魅力が付かないような状態であった。
それを合板を17枚貼るだけという少ない手数で住育の場へとリノベーションをする。
全47戸を時間をかけてDIY型へと更新しながら、建物の価値自体も入居者の手と共に高めることを目指す。