”中古住宅”は、1970年代の高度経済成長期の際に作り出された新築至上主義ヒエラルキーにおける下層概念に置かれた住宅である。マイホームを夢見る世代にとって「マイホーム=新築」である(あった)ことは世帯をもつ家庭にとって須らく正見であった。人口減少のおり、空き家が増える時代に「空き家問題」という“問題化”された今、当該物件のような“再販住宅”における中古住宅の商品化は、空き家活用という社会課題解決に一役を担っている。再販事業の裾野を広げるためには従来の既製品でリフォーム(Re・Form)カタチを戻すのでは無く、リノベーション(Re・Innovation)新価値を再び見出す、ことが重要と考える。この設計におけるマストデザインは各空間を繋ぐ“8連アーチ”であり、日々の暮らしの中で家族の動線に時間軸を重ねることでアーチを潜るたびに自分の位置を確認し、それは家族がどの空間に居ても“潜る=存在”として姿を見ずとも安心感をもたらせる。アーチの袖壁の空間、そこには“家族の個々の入口”と“Art”が入交り、「家族と自分の存在×豊かさ」が芽生える。“中古住宅”は“既存住宅”へ概念を変えなければならない。この“Enfilade 家族を繋ぐ8連アーチ”は今という時代の再販住宅として一つの前進事例になるよう祈ってやまない。
BEFORE
築34年の新耐震のマンション。街から比較的近くアクセスは便利である。角部屋で明るいが、玄関からLDKまでの廊下が2部屋をまたぐ為か、どことなく長く、暗く感じた。