「南国鹿児島に断熱は不要でしょ?」
そんな間違った認識を払拭するため、物件オーナーであり、鹿児島市のエネルギー供給会社である日本ガスが、断熱エコリノベを通じて省エネルギーを推奨するという、一見矛盾しているように思える企画が今回の鹿児島エコリノベ実証実験PJである。
この取組は、増え続ける空き家問題に対する解決の糸口となるよう、賃貸でも快適な暮らしを提供することで長くその物件に住み続けてもらいたいという意図のもとに計画された。
天井・壁・床には温熱計算に基づき選定された断熱材を隙間なく充填し気密もしっかり確保することで、断熱施工後のUa値は0.41まで向上させた(HEAT20G2レベル)。
さらに鹿児島大学の協力の下、無断熱既存空室で同一機種のエアコンを用いた温度測定、電気使用量のデータ測定を行った結果、断熱後の部屋では外気温が0度のときでも室内表面温度は変化が少なく、無断熱の部屋に比べ体感温度は3.1度上昇、電気使用量は30%減というデータを得た。
鹿児島市の玄関口である”鹿児島中央駅”と中心繁華街”天文館”から共に1kmの好立地であるにも関わらず長年空き家であった本物件は、このデータを入居者募集時に明文化することで、完成引き渡し前後に入居が決まり、空室対策としての効果も立証された。
今後のストック活用の一つの事例となればと願う。
BEFORE
昭和の団地に代表される典型的な2DKの間取り。各部屋が仕切られているので、プライバシーの確保はできるが閉鎖的な印象は否めない。角部屋なので、明るさは十分に確保されているが、無断熱の部屋は夏は熱くて冬は寒い。特にタイル張りのお風呂とトイレは毎日利用する場所なのに、冬場は冷蔵庫のように冷え切ってしまい、利用するのが億劫になってしまっていた。