通常、美容院の空間は「待合スペース」「カットスペース」「シャンプースペース」のような見せる要素と、「パーマ液などの調合」といったバックヤード的な隠す要素で構成するのが定石です。しかし、新しい美容室を目指す上でまずはこの前提を疑うことからはじめ、あえて中央にダイニングレストランのように中央に機能部であるセントラルカウンターを配置し受付機能部とカラー・パーマなどの製作スペースの2か所を配置する空間構成としました。空間の左右にカットスペースとシャンプースペースをそれぞれ配置、後方部にはスタッフルーム、WC、VIPルームことヘッドスパスペース、着付けなどフレキシブルに活用できるフリースペースを1直線に配置という思い切った構成にすることで、スタッフが広いスペースのどこにいても目が行き届く環境をつくりあげました。そこにカット台やシャンプー台など既存店からの転用什器を入れていきながら、例えばオープンスペース前提だがお客様によってはカーテンをひいて個室化できるような工夫をひとつづつ丁寧に施工していきました。
施工後、オーナー様からは「これまではインカムをつけてスタッフ同士がコミュニケーションしていたけど店内がオープンで見渡しやすくなったことで、その必要がなくなったし、何よりも働きやすくなったことで笑顔が増えた」という感想をいただきました。同業者からの見学依頼も多いそうです。
BEFORE
1989年の創業から30年にわたり「高い技術とホスピタリティ」の両立で北九州市の美容業界を牽引してきたお店から「お店としての将来と働くスタッフの仕事環境の充実のためにも移転を考えている」という相談をいただきました。これまでの店舗はいわゆる「鰻の寝床」とよばれる奥に長い造りでしたが、新しい店舗は面積182㎡の大きな空間。まさにお店そのものをコンセプトからアップデートしたいという想いを受けて、現在の店舗のすぐ隣の更に広いスペースへの移転OPENする企画でした。この場所で「小規模店が誇る美意識や技術などの職人的要素や細やかなホスピタリティを維持しつつ、美容師にとって働きやすく、お客様からの評価も得られることで経営が安定するような美容業界の新しい未来をつくりたい」というオーナー様との二人三脚のリノベーションがスタートしました。
