「また出逢っちゃいました。どこかに使えますかね?」打合せテーブルに山積みになるタイルサンプルを前に、嬉しそうに頭をかかえるご夫婦。これが私たちの毎回の打合せの光景でした。
〝コストを抑えたシンプルな家〟というテーマでスタートした設計打合せ。お話を聞いていくうちに、質感や手ざわりを大切にしていることを感じ、感性に合う様々な仕上げをご提案したところ、二人のタイル熱に火がつきました。「新しい世界」に出会ってしまったのです。
どこに出かけても、気になるのは「仕上げ」。タイルを扱うショールームを3軒ハシゴし、何度も足を運びました。グリーンを置くインナーバルコニーには天然石のモザイクタイル。トイレの壁にはヘリンボーン柄の小さなタイルを真鍮の見切りとの組み合わせて。洗面カウンターの立ち上がりにも、ランダムな模様のタイル。キッチンの腰壁には、陰影の美しいモルタルを取り入れ、コンロ横の壁の大判タイルは同じ高さで廊下まで貼りのばし、帯のように水回りのブロックをぐるりと包む。みるみるうちに、多種多様なタイルが家の中に収められていきました。
服を選びアクセサリーを重ねていくように、細部まで自分のこだわりを重ねていく。家づくりを通して知る、新しい仕上げの世界。
BEFORE
ご実家を受け継いだマンションは、窓から見える電車が走る風景がお気に入り。細切れだった3LDKの間取りは、4つの窓を取り入れた開放的なリビング・ダイニングをもつ、1LDKに。家具とグリーンを集めるのが趣味のご夫婦は、コストやデザインに魅力を感じ、定額制のパッケージリノベーションを選択しました。