既存建物は築25年のハウスメーカーによる建物である。
築年数や敷地条件などにより、中古住宅としてマイナス評価され、販売が長期化していた。加えて一般的にハウスメーカーの建物は構造の検討や保証の継続などの問題があり、大規模な改修をする際には慎重な検討を要する。そこで、本プロジェクトでは元施工のハウスメーカーも加えて「良質な社会ストックの実現」という想いを共有する、各領域で高い専門性を持つプレイヤーによるチームを結成し、各々の強みを活かすことでそれらの問題を解消する仕組を実現した。
中古住宅を購入する上で不安要素につながることの多い、構造・環境性能について、耐震適合証明の発行と瑕疵保険の付帯。また耐久性向上のため、外壁にはハウスメーカーにて30年耐久塗装やバルコニー防水更新を実施。これらの履歴はメーカーに残り、アフターメンテナンスサービスの継承も可能にした。断熱性能はH25年基準である断熱等級4、省エネ等級5を実現し、それを可視化できるよう家の燃費性能を示す「エネルギーパス」を発行した。さらに既存鉄骨造のポテンシャルを活かし、住まい手が手を入れる余白をもった自由度とデザイン性の高い空間を実現。これらの、安心安全の仕組みと新たな魅力付加をチームによって実現し、適正価格で市場に再流通させることができた。これからの住宅のあるべき姿を示して啓蒙、世の中の意識喚起を促したプロジェクトである。
BEFORE
緑豊かな公園の近くに建ち、前オーナーが注文住宅で建てた想いのこもった本建物は、ハウスメーカー施工の重量鉄骨造である。内部を解体し、スケルトン状態にすることで現れたのは、ダイナミックかつ築25年とは思えない良好な状態の構造躯体だった。
建物の築年数や敷地形状などの要因により、これまでの中古住宅市場ではマイナス評価されていたが、このスケルトン状態で建物のポテンシャルの高さを確認できたことにより、前オーナーの想いと共に後世に住み継いでいくべき建物であると確信し、本リノベーションプロジェクトがスタートした。