ミース・ファン・デル・ローエ氏の「Less is More」。隈研吾氏の「負ける建築」をはじめ、「存在感の無い」という世界観は古今東西様々なクリエーターが掲げてきた王道のデザインコンセプトの一つであろう。
30代クリエーター夫婦&黒猫のためのリノベーションは、こだわり抜かれた家具や書籍や雑貨のコレクションに囲まれる暮らしが、クリエイティブの源にもなっている
白と黒の間に存在する様々なグレー。グレーゾーンは透明感へと変色し、ゼログラビティのような錯覚を誘引する。さらにグレーという無彩色は、配置されたモノを引き立たせる効果がある。施主のコレクションを最大限に際立たせる為の手法として、様々なグラデーションのグレーで空間を構成し「存在感の無い」箱をデザインした。
また、リビングの壁面に設置する本棚は、ディター・ラムスのデザインした「ヴィッツウ/606シェルビング・システム」をセレクト。この本棚は、主張しない誠実な佇まいであるが、本を陳列することにより、プロダクトの存在感が消失されるデザインとなっている。※ラムスの提唱するグッドデザインの10箇条でも「5. 主張しない、10. 最小限である」と「存在感の無い」ことが二項目も挙げられている。
様々な無彩色で構成された「限りなく透明に近いグレー」な空間は、コレクションを際立たせると同時に、黒猫も暮らしに溶け込ませることとなった。
BEFORE
築45年のSRCマンション。ファミリー向けの2LDKの間取り。築年数の経過により、老朽化が激しかった。リノベーションにあたって、二重窓の設置などの断熱性能の向上も必要に迫られた。